世界では年収3000万円、日本だと700万円… エンジニア採用の現実。日本企業"国際化"の壁
「人材が不足していれば給料が上がるのは当たり前です。自動車関係の画像認識技術を持つエンジニアの博士を採用したいという企業からの依頼で、グローバルで給与水準を調査したことがあるのですが、(年収)約3000万円でした。データを日本企業の役員会に持っていくと、払える給料は700万円だと言われました。『社会人経験がない』からだと」
そう話すのは、日本を拠点にしたHRスタートアップZooKeepで代表を務めるエイブル・ケーシーさんだ。アメリカ出身のシリアルアントレプレナーで、日本在住歴は15年超にのぼる。ZooKeepでは、国内外の企業の採用を支援している。
空前の人手不足の今、国内では日本人だけでチームを運営することが困難になりつつある。
給与水準の低さは、世界から人材を集める上で日本の大きなボトルネックの一つだ。ただ、グローバル人材を採用していくためには、日本企業にはまだまだ見つめ直さなければならない点があるという。
海外人材の採用課題を突き詰めていくと、日本におけるジョブ型雇用を成功させるヒントも見えてきた。
ITスクール卒業者、未経験で即採用も
ケーシーさんは、コロナ禍以降、北米の企業の間で東南アジアや南米からエンジニアを採用する動きが加速していると話す。新興国の優秀なエンジニアの技術力は非常に高く、加えてアメリカなどと比べると人件費も安く抑えられるからだ。
ミャンマーの現地エンジニアを「雇用代行」という形で日本企業などに"フルリモート"で派遣しているPLUS IMPACT・CEOの高田健太さんも、「途上国や新興国には優秀でもなかなか機会に恵まれていない人が多い」と、優秀な人材がまだ残っていると指摘する。
日本では、大企業からスタートアップまで、さまざまな層でエンジニアが不足している。スタートアップであれば創業者のビジョンに共感して、多少給与水準が低くても熱量の高い人材が集まる可能性はある。一方、高田さんは特に中堅・大手企業の中でもSIerや受託開発を担う事業者の状況が深刻だと話す。
「人手不足からITスクールを卒業したばかりのほとんど未経験の人材を採用して、(実務で)トレーニングしていくケースもあります。そういった人材と比較すると、途上国・新興国のエンジニアは非常に優秀です」(高田さん)
高田さんとしては、ここのマッチングを進めていきたいわけだ。